PMIの進め方④ 関係者との信頼関係の構築

PMIの進め方

PMIではM&Aに関わるあらゆる関係者との信頼関係を構築することが重要です。

譲受する企業とは違い、譲渡する企業はM&Aによって従業員や取引先の大きな影響を受けます。

PMIでは関係者との信頼関係を早急に構築する取り組みが欠かせません。

特に譲受側が意識する必要性が高いポイントなので、信頼関係構築の重要性や関係者別の対策を理解しておきましょう。

それではPMIの進め方シリーズ第4回スタートです。

PMIにおける信頼関係構築の重要性

M&Aによって統合するときには、影響を受ける関係者がたくさんいます。

やはり、譲受側と譲渡側の経営者と従業員への影響が最も大きいのは確かです。

しかし、取引先にとっても切実な問題で、譲渡側の取引先は新たに譲受側と取引を始めるかどうかを検討しなければならないでしょう。

PMIではM&Aに関連するあらゆる企業・個人との信頼関係を構築することが不可欠です。

信頼によって何が実現されるのかを、代表的なポイントに絞って確認していきましょう。

譲受側と譲渡側で経営の方向性を共有できる

譲受側と譲渡側の経営者の信頼関係を構築すると、M&Aを検討している段階から相互理解は深まります。

M&Aが成立してから、経営の方向性のずれが問題となってPMIの推進が困難に陥ることもあります。

契約成立前から両社の間で信頼関係を築き、経営の方向性を共有してすり合わせると、スムーズにPMIを進めて事業を統合することが可能です。

シナジーによる成果を生み出す基盤になる

M&Aによるシナジー効果を引き出し、成果を生み出すには信頼関係構築が必要です。

譲受側と譲渡側の経営者だけでなく、従業員間での信頼関係があることで、お互いのビジネスや業務を統合してシナジーを生み出せるようになります。

相手を信頼できなければお互いに理解を示して歩み寄ることは難しいでしょう。

両社の従業員が協力して成長を目指す体制を整えるには、信頼関係の樹立が欠かせません。

M&A後に強みを発揮できる環境を構築できる

PMIで信頼関係構築が重要なのは、M&Aを締結した二社以外にも事業に関係する会社があるからです。

M&Aについて取引先から理解を得られなければ、仕入れや販売ができなくなるリスクがあります。

また、今まで利用していた外注先や、製品を生産している工場の土地のオーナーなどからもM&Aの理解をしてもらえなければ、本来生まれるはずだったシナジーがなくなる可能性があります。

あらゆる関係者から信頼される関係を築くことで、M&A後に強みを生かして事業を進められる環境が手に入ります。

PMIの関係者別の対応方法

PMIでは、譲受側が率先して関係者との信頼関係の樹立に注力することが重要です。

譲受側が譲渡側関係者との信頼関係構築に取り組むとスムーズにPMIを進められます。

ここでは関係者別に対応方法を解説します。

譲渡側の経営者

譲渡側の経営者とは同じ目的意識を持って協力する関係を樹立するのが大切です。

譲渡側の経営者は事業や従業員を守る立場なので、さまざまな要望を持っています。

従業員から要望をヒアリングし、譲受側も譲渡側に要求を伝えて交渉しましょう。

譲受側の経営者は譲渡側の経営者に敬意を払いつつ、本音を率直に伝えて話し合いを進めるのがポイントです。

M&Aの検討時点から相互理解に努めるとスムーズにPMIを進められます。

譲渡側の経営者が退任するなら時期と処遇を、残る場合には処遇や役員退職金のすり合わせをプレPMIまでに済ませておくとトラブルを防止できます。

譲渡側の従業員

譲渡側の従業員の協力を得てM&Aを成功に導くことは重要です。

譲渡側のキーパーソンが退職したり、従業員のモチベーションやエンゲージメントが低下したりすると失敗につながります。

プレPMIの段階でキーパーソンから協力を得られるようにし、M&Aが成立したら譲渡側の従業員への説明会や個別面談を実施しましょう。

就労環境や処遇の改善も試みて、強い信頼関係を築き上げていくのが大切です。

譲渡側の取引先

M&Aが成立した後に譲渡側の取引先と取引を継続する場合には、状況説明と譲受側の事業について情報提供をして、信頼関係の構築と醸成を図るのが大切です。

継続取引をする場合には、契約の取り扱いや条件面を相談して良好なビジネスパートナーになることを目指しましょう。

なお、取引を取りやめる場合にも状況を説明して対応するのがマナーです。

取引先以外の関係者

M&A後のキーになる関係者とはコンタクトを取って状況を説明し、今後の対応を相談して円滑にM&Aを進められるようにします。

外注先、人材派遣会社、許認可をしている政府機関、加盟している組合や団体が代表例です。

譲渡側が工場やオフィスを借りている場合には、不動産管理会社やオーナーとの信頼関係の構築も重要になります。

まとめ

関係者との信頼関係はM&Aを成功させるキーになります。

譲受側、譲渡側それぞれの経営者、従業員の間で信頼関係を醸成していくことが大切です。

また、日本ではまだM&Aの理解が浸透していない状況があります。

PMIでは譲渡側の取引先や関係者も含めて状況を説明することが必要です。

丁寧な説明と傾聴、継続的なコミュニケーションが信頼関係の基盤になるので、M&Aの初期検討の段階から着実に進めていきましょう。

この記事を書いた人
中野広一

キャブコンサルティング 代表。中小企業診断士。2021年に9年間経営してきた企業を売却。自分自身が売却後の引継ぎに苦労した経験を踏まえ、同じ様な悩みを持つ経営者に寄り添いたいという想いからPMIサポート事業を展開。

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