M&AではPMIを通して事業機能統合を進めることでさまざまなシナジー効果を得られます。
企業を持続的に成長させるためには、個々の事業機能が高いパフォーマンスを発揮できることが必要です。
PMIはシナジーによって事業機能統合を進めるのが基本になっています。
そこでシリーズ第6回は、事業機能統合の流れと成功のポイントを解説します。
事業機能統合の目的
事業機能統合の目的は、譲受側と譲渡側のヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を統合させて価値を生み出し、企業成長につなげることです。
譲受側と譲渡側の事業のシナジーによって強みを強化したり、弱みを改善したりするのが基本的な取り組みです。
また、現行法令に則って是正をしたり、業務統合を通して円滑な運営ができる体制を整えたりすることも含みます。
ただ最終的にはシナジー効果による持続的な成長を実現し、企業価値を高めるのが目的です。
事業機能統合にシナジー効果では売上シナジー・コストシナジーによって収益性を改善することが基本です。
M&A後の価値創造を持続できるように、経営資源に投資できる体制整備が目標になります。
必要に応じて初期投資をして統合を加速させ、円滑に企業成長につなげることも重要です。
事業機能統合の基本的な流れ
事業機能統合に必要なプロセスは、人事・労務、会計・財務、法務、ITシステムのような分野、M&Aの実施形態などによって異なります。
しかし、中小PMIの中での事業機能統合の大枠は類似しています。基本的には以下の流れを踏襲すれば問題ありません。
- 現状把握
- 統合方針の検討
- 行動計画の決定
- 計画の実施
- PDCAサイクルの継続
- ➀現状把握
M&Aの初期検討、プレPMI、M&A成立後の初期にかかえて現状把握を徹底します。
- ②統合方針の検討
PMIで事業機能の統合方針を決定し、優先順位の高い箇所から計画的に進めることが基本です。
- ③行動計画の決定
行動計画を立てる際にはKPIを明確化し、計画を遂行しているときや実施完了後に検証できるようにします。
- ④計画の実施
計画に沿って実施していきます。
- ⑤PDCAサイクルの継続
ポストPMIでPDCAサイクルを継続して、より良い業務体制に改善していくことでM&Aの効果を最大化できます。
事業機能統合を成功させるポイント
事業機能統合を円滑に成功させるには重要なポイントが3つあります。
トラブルを最小限にして、PMIの短期間でキャッシュを生み出す成果を出すために何をすべきかを確認しておきましょう。
分野別に課題を洗い出して取り組む
事業機能統合は、まずは分野別に取り組むのが重要です。
最終的には分野を横断して協力し、新しい体制を整えた方が売上シナジーもコストシナジーも上がります。
しかし、まずは各部署のレベルで課題を洗い出し、解決して譲受側と譲渡側の統合を実現しなければ始まりません。
全体を管理する責任者を置いて進捗を管理し、他部署との連携が必要な場合には打診するといった体制を整備すると、分野間の協力を通してシナジー効果を上げやすくなります。
担当者と計画を明確に定める
統合方針に基づいて行動計画を策定するときには、具体的に何を誰がいつまでに実施するかを明確し、各人に責任を持たせるのがポイントです。
現場のリソースや従業員のスキルを加味して実現可能性を検討し、現実的なプランを立てて取り組めるようにします。
業務の種類によってはマイルストーンを設定して計画的に進める方針を立てることも大切です。
マイルストーンのKPIは複数項目から構成し、多角的に進捗を確認できるようにすると、計画の修正や改善が容易になります。
進捗管理を徹底する
進捗管理は、事業機能統合を計画通りに進める上で欠かせません。
PMIの行動計画の実施の段階に入ると、複数の領域で多数の課題を解決するための取り組みが同時進行します。
全体の進捗を管理して適切なリソース配分をすることで、統合の目標をタイムライン通りに達成できる可能性が高まります。
PMI推進の責任者が全体の進捗を把握できるように共有化ツールを用意すると、的確な判断をタイムリーにおこなうことが可能です。
- 分野
- 課題内容
- 優先度の高さ
- 取り組み内容
- 担当者
- 進捗状況
といった項目を設けて、全体像を把握できるフォーマットを用意したり、ITツールを使用して共有したりすると効率が上がります。
進捗が遅れている場合には新たに浮上した課題を確認し、必要に応じてリソースの調整や優先度の変更をおこなうと業務統合による効果を引き上げるポイントです。
まとめ
事業機能統合は中小PMIにおいて、売上の向上とコストの削減をシナジー効果によって生み出す重要な取り組みです。
M&Aの初期段階から現状把握に努めて、PMIを開始する時点で速やかに統合方針と行動計画を立てて推進できるように、準備を進めることが成功に繋がります。
事業機能の統合は分野別に進めていきながら、全体の進捗管理をする担当者が連携も含めて調整をしていくと効率が上がります。
PMIの期間が終わった後もポストPMIでPDCAサイクルを回し続けて、M&Aの効果を最大化できるように取り組むのが大切です。