PMIの進め方⑪ 管理機能統合 (法務分野 編)

PMIの進め方

法務分野は内部・外部のコンプライアンスにかかわる重要な管理機能で、M&Aによって大きな課題が発生することがあります。

シリーズ第11回は、法務分野の管理機能統合で必要とされるポイント、基本的な統合アプローチ、PMIにおける成功のポイントを解説します。

法務分野の機能統合とは?

法務分野の機能統合とは、譲受側と譲渡側の間でコンプライアンスや契約などについてのすり合わせをすることです。

中小PMIでは一般的に譲受側の法務のあり方を基準として考え、譲渡側の法的な課題を確認して対応します。

基本的には法令遵守のための対応を前提として、内部体制および外部体制の統合を通してコストシナジーを生み出すことを目指す取り組みです。

法務分野の機能統合のアプローチ

法務分野では法務違反のリスクの低減や、契約条件の見直しなどのさまざまな取り組みが必要になります。

PMIにおける基本的な4つのアプローチを確認しておきましょう。

コンプライアンス遵守の課題解決

法務分野の統合で、最も重要なのがコンプライアンス遵守の達成です。

M&Aの相手先が法令に則って適切な対応をできていない場合があります。

例えば、以下のようなことが挙げられます。

  • 登記の誤り
  • 個人情報保護体制の整備不備
  • 秘密保持に関する管理不備
  • 景品表示法や薬機法などへの抵触

また、知的財産権に関連するトラブルもM&Aのときにはしばしば起こります。

知的財産権の登録手続きがおこなわれていない場合もありますが、他者の知的財産権を侵害している可能性がある場合には速やかな対応が求められます。

内部規程類の見直しと適正化

内部規定類の整備はM&Aの成功につながる重要なアプローチです。

相手方の企業が、会社法で求められている決議のあり方を踏襲する仕組みが整っていないことすらあります。

定款や内部規程類を全面的に見直して、両社が統合してグループ会社としてシナジー効果を発揮できる下地を整備することはPMI初期から必要です。

外部との契約や取引方法の調整・是正

譲渡側が外部と契約していた内容について精査し、必要な対応と今後の取引方法の調整をすることはPMIの段階で不可欠です。

M&Aをしても通知するだけで契約を継続できる場合もありますが、「同意を得なければならない」、あるいは「契約をし直さなければならない場合」もあります。

チェンジ・オブ・コントロールの確認と対応は早期に取り組むべき点です。

また、他者との取引条件を精査して公正な取引条件になっていない場合には不備を改善する必要があります。

チェンジオブコントロール

Change Of Control(COC)

経営権や支配権の変更が一方の当事者に発生した場合、契約内容を制約したり、他方の当事者が契約を解除できるようにする条項のこと。

許認可の承継または新規取得

M&A後に譲受側が譲渡側の持っている許認可を必要とする場合には、PMIの初期に早急な対応をしなければなりません。

M&Aによって譲渡側が保有していた許認可を譲受側が承継できる場合もありますが、できない場合もあります。

M&Aを通して譲渡側が持っていた許認可がなければ「製品を製造できない」、「サービスを提供できない」という場合にはM&A前に関係省庁に確認を取ることが必要です。

継承ができない場合には許認可の新規取得をして、M&Aによるシナジーを生み出せるようにすることが求められます。

吸収合併によるM&Aで譲渡側だけが許認可を持っていたときには、承継の課題が発生しやすいので特に注意が必要です。

法務分野のPMIをするときのポイント

法務分野で中小PMIを通して管理機能統合をする際には、譲受側の寄与が大きいのが一般的です。

ここでは法務分野のPMIで、特に譲受側が意識した方が良いポイントを解説します。

現行法令に合わせて全面的な見直しをする

譲受側は譲渡側のコンプライアンス対応ができているかという視点で、上からの目線で対応しがちです。

しかし、実際には譲受側も現行法令に合わせたコンプライアンス遵守ができていない場合があります。

M&Aを契機として譲渡側の規程や契約も参考にしながら、全面的な見直しを進めていくことが重要です。

短期的には内部についての法令遵守の対応をおこない、中期的な視点で外部契約なども法令に応じて契約の改善を図っていくと良いでしょう。

プレPMIまでに負債の対応を済ませる

負債への対応は法務分野にとって切実な課題です。

譲渡側の経営者が「企業との間に債務関係がある」、「経営者保証によって金融機関から借入をしている」といった場合には、M&A成立後にトラブルが発生するリスクがあります。

プレPMIまでに譲渡側経営者にかかわる負債について両社で共有し、具体的な処理方法について合意を得るようにすると法務上の対応で問題が生じにくくなります。

まとめ

法務分野の管理機能統合は、コンプライアンスの遵守をするために欠かせないだけでなく、外部との契約の適正化にもかかわる重要な取り組みです。

内部規程や外部との契約書類を両社で照らし合わせて、M&A後には速やかにすり合わせましょう。

また、許認可については承継の可能性をプレPMIまでに確認し、承継できない場合には新規取得の計画を立てる必要があります。

法務周辺は早期対応を求められる内容が多いので、プレPMIで枠組みと計画を整えてスムーズに対応できるようにすることが重要です。

この記事を書いた人
中野広一

キャブコンサルティング 代表。中小企業診断士。2021年に9年間経営してきた企業を売却。自分自身が売却後の引継ぎに苦労した経験を踏まえ、同じ様な悩みを持つ経営者に寄り添いたいという想いからPMIサポート事業を展開。

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