M&Aにおける労務リスクとは?課題と対策方法を解説

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M&Aをおこなうときは、労務の統合が課題になります。

譲受側と譲渡側との間で交渉が必要になることが多く、譲受側にとっては労務リスクの考慮と対策が重要です。

この記事ではM&Aにおける労務リスクと、労務課題の対策方法を解説します。

M&Aにおける労務リスクとは

M&Aの労務リスクとは、譲受側または譲渡側が労務コンプライアンスを遵守していないことや、労務関連規程が異なることによって生じるリスクです。

労務の統合はM&Aで重要な要素なので、ここでどのようなリスクがあるかを確認しておきましょう。

法令遵守ができていない

M&Aの労務リスクとして大きいのは、法令遵守ができていない企業との統合です。

譲渡側が法令遵守をしていないというケースがしばしばあります。

労使協定が締結されていない、労使協定を結んでいても労働基準監督署に届出をしていない、労働条件通知書を交付していないなどといった問題が典型的です。

社会保険の加入が未了だったり、労働組合との事前協議の仕組みがと整っていなかったりする場合もあります。

法令遵守での労務管理体制を整えるために、コストも時間もかかるリスクがあるので注意が必要です。

労務管理の仕組みが異なる

譲受側と譲渡側では労務管理の仕組みが異なります。

労務リスクとして、M&A後の労務管理方法の統合が難しいことが挙げられます。

労務関連規程を統合したり、共通の労務管理システムを運用することが課題です。

労働災害対策の方針が違う

労働災害対策の方針やルールは、譲受側と譲渡側で違います。

業務内容によって労働災害対策として重要な項目が異なるからです。

また、法令遵守という観点で労災対応ができていない場合もあります。

M&A後のグループ全体で統一的な労働災害対策を定めることは大きな課題で、従業員から納得してもらえないリスクもあります。

長時間労働や未払い賃金などの問題がある

労働時間や時間外手当のあり方は、企業による違いが大きいのが実情です。

常日頃から長時間労働やサービス残業をしている場合もあります。

このような場合、M&A後に法外な長時間労働を是正したり、サービス残業による未払い賃金を過去に遡って支払わなければなりません。

法令に則って有給消化できていない場合にも対応しなければならず、M&A後の労務対応の負担は大きくなりがちです。

M&Aで労務課題に対策する方法

M&Aにおける労務の統合を効率的に実現するためには、課題を理解して対策することが必要です。

ここではM&Aの検討段階からできる対策方法を紹介します。

プレPMIまでに労務管理の違いを明確にする

まずはプレPMIの段階で、譲受側と譲渡側の労務管理の違いを確認しましょう。

この時点で労務管理の統合方針を検討し、実現可能性ならM&Aを実行するという判断を下すことが大切です。

労務デューデリジェンスで課題を確認する

譲受側は譲渡側の労務デューデリジェンスを社労士事務所などに依頼しましょう。

労務課題を明らかにできるため、M&A後に解決すべきことがわかります。

未払い賃金の有無などもわかり、労務PMIにかかる費用や期間も想定しやすくなります。

M&A後の労務管理体制を策定する

M&A後の労務管理体制を、プレPMIまたはPMIの初期に策定しましょう。

M&Aによって生まれた新しい組織に合わせて、効率的かつコンプライアンス遵守の管理をする方法を取り入れることが大切です。

譲受側、または譲渡側が運用してきた労務管理システムを採用することもできますが、統合後の理想形を考えてシステムを構築した方がシナジー効果を高められます。

PMIで計画的に労務改善を進める

M&Aによる組織統合を進めるPMIの段階で、計画的に労務改善を進めることが重要です。

M&Aのタイミングですべての課題をまとめて解決できるわけではありません

未払い賃金の支払いなどは早期対応が必要ですが、規程類の改定や労務管理システムの統合は段階的に進めた方が従業員に受け入れられやすくなります。

人事PMIと並行して進める

労務PMIは人事PMIと並行して取り組むことが大切です。

労務PMIは既存の人材の労務管理について統合を進めるのに対し、人事PMIは今後の人材のあり方を考えて取り組むのが特徴です。

人材の教育や配置、補充などの計画によって労務で対応すべき内容が変わります。

人事・労務が連携してPMIを進めることでM&A後の理想的な体制を整えられます。

まとめ

M&Aでは、労務の規程や管理についてトラブルが起こるリスクがあります。

特に法令遵守をしていなかったときには、規程の改定や労使協定の締結などのさまざまな手続きや、未払い賃金の支払いによるコストなどが発生します。

M&Aの労務リスクの対策として重要なのは、プレPMIにおける相談と労務デューデリジェンスの実施です。

そして、PMIで段階的に施策を進めて新しい組織に合った労務管理を取り入れましょう。

この記事を書いた人

中小企業診断士。慶應義塾大学環境情報学部卒。「DXと地域貢献」を理念とし、中野区・新宿区を中心とした中小企業経営相談や経営セミナーを実施。近年PMIの重要性を肌で感じ本事業に参画。

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