システム統合にはリスクがあります。
どのようなリスクがあるか把握した上で、システム統合を実施することが大事です。
この記事では、システム統合のリスクにどのようなものがあるか、を説明した上で、具体的な対策を解説します。
システム統合リスクとは
システム統合リスクとは、M&Aで新しいシステムを運用する際に起こり得る問題です。
M&Aをしたときには、両社のシステムを一元化して運用できるようにするのが一般的です。
ただ、それぞれが運用してきたシステムが異なると統合の際に以下のようなリスクが発生します。
システム統合の目的を見失う
システム統合の過程では、様々な課題に直面します。その際、システム統合の目的が明確になっていないと、場当たり的な課題解決策を選択してしまい、当初のシステム統合の目的から乖離した状態になってしまうこともあります。
システム統合により生産性が低下する
システム統合の目的を明確にし、その目的を達成するための正しい統合方法を選択しないと、
生産性が低下することもあります。
例えば、システムの費用削減ばかりに重きを置き、業務フローを十分考慮せずにシステム統合をした結果、システム統合前より業務が煩雑になり、非効率になってしまう、といったことです。
従業員の不満が増大する
システム統合により生産性が向上する場合でも、システム統合の直後は業務フローが変わるため、
一時的に従業員の負荷が増大することがあります。
M&A直後は、従業員は不安を抱えており、さらに業務の負担が増大すると、それが不満となり、
場合によっては離職につながってしまうこともあります。
データが消失してしまう
システム統合では、データの移行が発生します。
システムが変われば、データの形式を変換してから移行する必要があるでしょう。
この作業は地味ながら、データの量が多ければ、作業量も膨大になります。
データの形式変換を自動化できれば良いですが、人手の作業で行う場合、オペレーションのミスで、データを消失させてしまうことがあります。
情報が流出してしまう
統合する両社は異なるセキュリティポリシーを持っています。
さらにシステム統合により、新たにクラウドサービスを利用することもあるでしょう。
システム統合に合わせてセキュリティポリシーを見直す必要があります。
セキュリティポリシーを見直さないまま、システム統合で新しいシステムの運用を始めると、
オペレーションのミスで情報を流出させてしまう、あるいは、セキュリティの脆弱性を攻撃され情報が流出してしまう、といったことが発生してしまいます。
事業が継続できない
システム統合により生産性向上を実現する場合、
それまでよりシステム化の範囲が広がる場合があります。
これ自体は良いことですが、
システムに障害が発生した時のことを考えておかなければなりません。
システム化の範囲が広がると、システムが障害で停止してしまうと、業務が何もできないということになりかねません。
システム障害が発生しても、最低限継続しなかればならない業務を継続できるようにしておく必要があります。
システム統合のリスクを減らす管理対策
システム統合では、あらかじめリスク管理対策を講じておくことが重要です。
ここではシステム統合のリスク管理対策のアプローチを紹介します。
IT‐DDとプレPMIでの準備
M&A締結前にIT-DDで譲渡側のシステムの調査を行い、プレPMIの段階でシステム統合で実現したいこと(目的)やシステム統合の方法を決めておくとよいでしょう。
従業員の理解を得る
従業員に対し、システム統合の目的を説明し、最終的には従業員の業務が効率化することを理解してもらいましょう。
また、システム統合後のシステムに習熟するためのトレーニング期間を設けたり、マニュアルや手順書を整備するとよいでしょう。
システム移行手順書を整備する
データ消失などのリスクを低減するには、システム移行の手順書を整備するとよいでしょう。
人手のオペレーションにはミスはつきものです。それらのミスを想定して、データのバックアップ手順や作業完了確認の手順などを決め、手順書にしておくとよいでしょう。
セキュリティポリシーを見直す
システム統合に合わせてセキュリティポリシーを見直しましょう。
統合する両社のセキュリティポリシーは異なりますし、システム統合により新たなシステムを導入することもあるでしょう。
新しいシステムや新しい業務フローにあったセキュリティポリシーを制定し、必要に応じてマニュアルや手順書を整備しましょう。
できればセキュリティの管理者を明確にするのがよいでしょう。
事業継続性を考慮する
システム統合によりシステム化の範囲が広がることでシステムへの依存度が高まると、システム障害などでシステムが停止した時に、どのように業務を継続するか、を考えておく必要があります。
最低限継続しなければならない業務と、システムの普及まで待てる業務に区分し、その際の業務のやり方をマニュアルや手順書にしておくとよいでしょう。
システム管理体制の整備
中小企業では、専門のシステム部門はないことが多いでしょう。
システム統合後に従業員を教育したり、セキュリティの対策を行ったり、システム障害時に復旧対応することを考えると、兼務でも構いませんので、システムの企画、管理、運用を担当する人を決めておく必要があります。
ただし、特定の人にすべてを依存してしまうと、その人の負荷が増大するだけでなく、その人がいないと何もわからない、というリスクになりますので、複数人で担当するのがよいでしょう。
PDCAを回す
システム統合は、統合して終わりではありません。
システム統合の目的が達成できているかどうかをモニタリングする必要があります。
システム統合後に従業員にヒアリングし、業務が効率化したか、マニュアルや手順書に不備がないか、
などを把握して、適宜改善していく必要があります。
まとめ
システム統合により想定されるリスクに対して、あらかじめ対策を実施しておきましょう。
システム統合の目的を達成するために、IT-DDやプレPMIの段階から早めにシステム統合の準備に着手しましょう。
システムの移行やセキュリティ、事業継続性のリスクに対して、ルールやマニュアル、手順書などを整備しておきましょう。
システム統合に対する従業員の理解を得て、PDCAを回すことでシステム統合の目的が達成できるよう、改善を継続しましょう。
コメント
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