PMIの段階でシステム統合を進める方法を具体的に検討し始めると、どこから手を付けるべきか迷ってしまうことがよくあります。
中小M&Aでは、プレPMIの段階からシステム統合のプロセスを考えて準備を整えておくことが大切です。
この記事ではPMIにおけるシステム統合の目的やプロセスを解説します。
IT DDの必要性や内容についても理解して、確実にシステム統合を実現しましょう。
PMIにおけるシステム統合の目的
PMIの段階ではシステム統合の目的はシナジー効果を得て、両社のベネフィットを大きくするための新たなシステムを運用できる体制を整えることです。
PMIでシステム統合を推進する上では目的の具体化が重要なので、成功につながるポイントを押さえておきましょう。
情報の一元管理と共有の基盤構築
システム統合では、M&A後に両社が保有している情報の一元管理と共有をすることでシナジーを生み出せます。
システム統合を通し、両社が必要なデータにアクセスして業務に活用できるシステムを構築することでビジネスを発展させることが可能です。
PMIではM&A後のそれぞれの企業が担う役割に応じて、必要な情報を共有できる基盤を構築すると全体として利益を生み出せるビジネスを展開できるようになります。
IT関連のコストカット
システム統合は、適切におこなうことでIT関連のコストカットを実現できます。
IT基盤は構築する段階でもコストがかかりますが、その後も維持、運用、保守といった面でコストが継続的にかかるのが問題です。
PMIではネットワーク、ハードウェア、ソフトウェアなどの統合を通してコストカットをすることが目的の一つです。
譲受側も譲渡側も使用してきた共通のソフトウェアの共通ライセンスを取得したり、両社のネットワークサービスを統一化したりしてコストカットができます。
M&Aによる業務効率化
システム統合は、M&A後の業務効率化に直結する重要な取り組みです。
業務システムの統合によって、重複している業務を基幹システム統合によって一元化すれば業務効率化になり、人件費を削減することもできます。
また、情報システム統合によって連携を取れるようにすれば、譲受側と譲渡側のコミュニケーションを円滑化することが可能です。
ITリスクへの対策
システム統合の目的としてITリスクへの対策もあります。
M&A後に譲渡側または、譲受側が問題を起こしてしまう可能性はゼロではありません。
システム統合をして一元管理することでリスク対策が可能です。
例えば、業務に必要なソフトウェアのライセンスをシステムで一元管理すると、常に合法的に利用している状況を保つことができます。
セキュリティについても、共通システムを利用することで同じ水準にすることができるため、M&A後に同じ情報管理の体制を整えることが可能です。
PMIでのシステム統合におけるIT DDの重要性
PMI のステージで、システム統合を進めるときにはIT DD(ITデューデリジェンス)が重要になります。
IT DDのポイントを詳しく知って対応しておきましょう。
譲渡側のITシステムの現状把握
IT DDでは譲受側が譲渡側のITシステムを把握して、譲受側が大きなリスクを負わないようにすることが目的です。
PMIに向けて、以下の点を調査して譲渡側の現状を把握します。
- 既存ITシステムの構成
- IT関連の組織体制
- IT関連のコスト
M&Aの協議の中で、相手企業が正確な情報を提供してくれるとは限りません。
リスクヘッジのためにIT DDを実施するのがM&Aでは定石です。
M&A後のシステム統合の可能性検討
IT DDの実施は、譲受側にとってシステム統合の可能性を検討する上で必要です。
システム統合がかなり難しいとなると、コストや期間がかかってしまい、M&Aのメリットが半減します。
IT DDをおこなった結果を受けて、システム統合ができないと判断された場合にはM&Aを断念した方が良いでしょう。
プレPMIにおけるシステム統合ビジョンの協議材料にもなるため、IT DDはできるだけ早い段階で実施することが大切です。
PMIでシステム統合をするプロセス
PMIでシステム統合をうまく進めるためには、成功に導けるプロセスを経ることが大切です。
ここでは、M&Aの検討段階からシステム統合を経て成功するまでに重要なプロセスを解説します。
両社のシステムの照らし合わせ
まずは、譲受側と譲渡側のシステムについて詳細を照らし合わせることが大切です。
プレPMIの段階で、差し支えない範囲でお互いのシステムを開示して打ち合わせをしましょう。
同じ基幹システムを使用している場合には統合が簡単になります。
ITリスクの調査
システム統合によるITリスクの調査は、プレPMIの段階で実施するのが理想的です。
IT DDもリスク調査の一つとして譲受側にとっては欠かせません。
リスクを洗い出してシステム統合の際の必要項目を明確にしましょう。
シナジー効果を生み出すシステムの検討
リスク回避を前提とした上で、M&Aを通してシナジー効果を生み出すために必要なシステムを検討します。
M&A後にそれぞれの企業が担う役割や具体的な業務を考慮して、業務の効率化やビジネスの展開になるシステムを協議することが大切です。
統合後のシステムの要件定義
システムの検討ができてきたら、M&A後に求められるシステムの要件定義をします。
機能面だけでなく、コスト面も加味して統合後のシステムに求められる内容を具体化し、両社で納得できる条件に落とし込みましょう。
システムの選定・開発
要件定義ができたら、M&A後に導入するシステムの候補について調査をします。
可能性のあるシステムを選定しましょう。
また、理想的なシステムが存在しないときにはシステム会社に開発の可能性やコストについて相談し、導入可能かどうかを検討します。
システム導入の計画策定
システム統合後のシステムが決まったら導入スケジュールを作成します。
PMIに入った時点で計画を決めることが多いですが、経営者間で理解が得られているならM&Aの契約前に大まかに計画を定めておくとスムーズです。
システム統合の実行
計画ができたらシステム統合を進めていきます。
譲受側も譲渡側も影響を受けるので、従業員に対する説明をしたり、業務フローを整備し直したりすることも必要になります。
現場からのフィードバックを受けて、新たな課題が生じていた場合には対策を立てることも重要です。
ポストPMIでの検証・改善
計画していたシステム統合が一通り完了したら安定運用を目指します。
ポストPMIで導入したシステムの良し悪しを検証し、もし問題点が見つかったら改善を図りましょう。
継続的な改善を進めることでM&Aによるシナジー効果が大きくなるので、ポストPMIの取り組みも前向きに進めていくことが大切です。
まとめ
PMIでは、M&A前の時点でのIT DDや両社のシステムに関する情報共有に基づいて、システム統合を進めることが重要です。
M&Aではシナジー効果を重視して統合後のシステムを考え、計画的に導入することが求められます。
統合後もポストPMIで検証や改善を進めていき、一体となってデータを生かせる基盤を作り上げていくことが大切です。
コメント
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