M&Aに財務諸表が与える影響が大きいことをご存知でしょうか。
財務諸表は、企業の過去も将来もわかる重要な資料です。
M&Aをおこなうときは、相手企業の財務諸表を分析するのが一般的になっています。
この記事では財務諸表がM&Aにどのような影響を及ぼすかをわかりやすく解説します。
財務諸表がM&Aに与える影響とは?
では実際にM&Aでは財務諸表がどのような影響を与えるのでしょうか。
譲受側、譲渡側の両方にかかわる重要な点を解説します。
M&Aの可否の判断基準の一つになる
財務諸表の内容は、M&Aの可否を判断する基準の一つになります。
M&Aでは譲受側が譲渡側を調査・評価するデューデリジェンスのプロセスがあります。
財務もデューデリジェンスの重要項目の一つです。
譲受側は譲渡側の業績や、債務状況などによってはM&Aをやめたいと考える場合があります。
M&Aを通して企業成長を見込めないのでは実行する意味がないため、財務諸表を確認して過去の財務の適正さや今後の成長可能性を分析することは重要です。
譲渡価額を決定する評価基準になる
M&Aのプロセスにおいて、財務諸表は譲渡価額の決定における重要な評価基準となります。
この財務諸表には、譲渡企業の価値を示す客観的な数値が含まれており、営業利益や純資産などの企業価値の指標が明示されています。
このため、M&Aのバリュエーションには大きな影響を与える要素となります。
譲渡価額の交渉においても、財務諸表の数値が根拠として頻繁に用いられることが一般的です。
第三者機関による財務諸表の分析を依頼し、その客観的な分析結果に基づいて評価や譲渡価額の算定・交渉が行われることが多いのです。
PMIのプロセスやコストの指標になる
財務諸表はM&A成立後のPMIのプロセスの検討や、M&Aによって発生するコストの資産における具体的な数値指標になります。
PMIにおいて財務会計システムの統合や、既存の負債の対応方法などの計画を立てるには財務諸表のデータが欠かせません。
財政について正確に把握することで、いつどの程度の費用が発生するかがわかり、M&A後の予算計画や財務計画を立てられるようになります。
財務諸表はPMIの進め方に大きな影響力があるため、プレPMIの段階で共有して協議することが重要です。
M&Aに影響を与える財務諸表
M&Aに影響がある財務諸表はいわゆる財務三表です。
ここでは財務三表の概要を簡単に解説します。
損益計算書(PL)
損益計算書は企業の売上高や原価、販管費などの内訳を明確に記述した決算書です。
企業の収支を大枠で集計した結果をまとめて、当期純利益を算出した根拠を示す書類になっています。
売上高や売上原価、営業利益や経常利益、営業外収益や営業外費用、特別利益や特別損失などが記載されています。
賃借対照表(BS)
賃借対照表は、企業の資産や負債をまとめた財政状態に関する決算書です。
貸借対照表は資産の部、負債の部、純資産の部から構成されています。
現金や商品、売掛金や有形・無形固定資産などの資産や、買掛金や借入金などの負債、資本金や資本剰余金などの純資産についてまとめられています。
キャッシュフロー計算書
キャッシュフロー計算書は、企業の現金の出入りについての詳細を示した書類です。
営業活動、投資活動、財務活動の3つに分けてキャッシュの変動を記載します。
営業活動のキャッシュフロー計算書では商品の販売や仕入れ、設備投資などによるキャッシュの動きがわかります。
投資活動の場合には、有価証券の売買に伴うキャッシュフローが典型的な内容です。
財務活動のキャッシュフロー計算書には、銀行融資や社債発行などの資金の調達や返済に関連する内容が記載されています。
M&Aで財務諸表から考えるべきポイント
M&Aでは財務諸表は、企業価値の判断と成功の道筋の検討に大きな影響を与えます。
ここからは、財務諸表を見るときに重要となるM&Aを成功させるための視点を解説します。
M&A後の環境分析を実施する
財務諸表は企業価値判断に大きな影響があります。
ただ、業績が不振のように見えても業界の中で見ると優秀な成績を上げている場合もあるので注意しましょう。
企業価値を正確に把握するためには、同じ業界の競合との比較をするのが大切です。
PMIでの改善可能性を検討する
PMIで何を改善すべきかを洗い出す目的で財務諸表を分析することも重要なポイントです。
財務分析は基本的に改善の可能性を考えて、M&A成立後に統合して成功できるストラクチャーを検討することが欠かせません。
財務諸表から課題を洗い出し、M&A後に改善できる計画を立てられるかどうかを検討しましょう。
まとめ
財務諸表はM&Aの成功の可否に大きな影響を与えます。
PMIの計画を立てて、M&A後に企業の持続的な成長を成し遂げるには、事前に財務諸表を確認することが欠かせません。
評価額の算定にも財務デューデリジェンスにも必要な資料です。
譲受側と譲渡側の協力によって成功できるスキームを描けるようになるので、可能な限りの情報共有をして計画を立てましょう。