基幹システム統合とは、M&Aを推進する上で欠かせないシステム統合の大きな部分を占めます。
譲受側と譲渡側の基幹システムの統合を実現すると、生産性向上に大きな効果が期待できます。
この記事では、基幹システム統合の概要や目的を解説します。
PMIにおいて、基幹システム統合を成功させるための戦略も紹介します。
基幹システム統合とは
基幹システムとは何かを理解し、基幹システム統合をすることの重要性を把握しましょう。
基幹システムとは
基幹システムとは業務システムの一部で、企業の経営や事業にとって不可欠な業務を支援するシステムです。
基幹システムは、一般的に以下のような業務を支援するシステムを指します。
基幹システムは企業経営にとって根幹となるシステムなので、生産性向上や情報共有に大きな影響を与えるため、M&Aでは基幹システム統合が重視されます。
基幹システム統合の目的
M&Aにおける基幹システム統合の目的は、2社の共通業務を一元化することで、間接業務の比率を下げ生産性を向上し、情報共有を促進することでシナジーを生むことです。
システムを一元化することで、システムの設備や運用コストを削減する目的もあります。
このように生産性を向上し、シナジーを生み出して、M&Aの効果を最大化することが基幹システム統合の目的です。
基幹システム統合の3つの方法
基幹システム統合では3つの方法が考えられます。
両社の業務のやり方やシステム化の状況、システム統合を機会とした業務変革を行うかどうか、
によって、適切な方法を選択するようにしましょう。
片寄せによるシステム移行
1つ目は、基幹システムを片寄せする方法です。
例えば、譲渡側が使っていたシステムを廃止して、譲受側で使用していた基幹システムに移行します。新たなシステム導入コストが不要、譲受側の従業員にとっては、業務のやり方が変わらない、
といったメリットがあります。
一方、譲渡側の従業員にとっては、業務のやり方が大きく変わるので負担が発生します。譲渡側の従業員の不満につながらないよう、片寄する方法を選択した理由を説明したり、譲渡側の従業員がシステムの操作に慣れるまでサポートするなどのケアが必要です。
新規システムの導入
システム統合を機会として、それまでできなかった業務改革を行ったり、DXを加速させる場合には、新規システムの導入をするのがよいでしょう。
システムの移行に費用と時間のコストがかかり、両社の従業員にとって、業務のやり方が大きく変わるので負担が発生しますが、生産性向上やシナジーを生むのに一番効果が期待できる方法です。
従業員の不満につながらないよう、新しい業務のやり方が定着すれば、間接業務の比率が低減し、働きやすくなることを説明することが大切です。
また、「クイックヒット」と言われる、短期的に効果が出る施策を計画、実行し、新システム導入の効果をすぐに従業員に実感してもらうことも考えましょう。
既存システムの併存と連携
両者の既存システムを併存し連携する方法もないわけではありません。両社のシステムの親和性が高い場合を除いては、お勧めしません。
業務のやり方が一元化せず、生産性を向上するという効果を出しにくいばかりか、両社のシステムを連携させるために新たな開発が必要になると、新しいシステムを導入するよりもコストがかかるケースもあります。
また、それぞれのシステムの運用やセキュリティ対策を個別にする必要があるため、システムに関する業務を効率化できません。
基幹システム統合を成功させる戦略
基幹システム統合が成功しなければ、M&Aによる生産性向上の目的が達成できないリスクもあります。
ここでは基幹システム統合の成功戦略を解説します。
基幹システム統合の目的を明確化する
生産性を向上することか、加えて業務改革を達成することか、さらにはDXを加速することか、どこまでを目指すか、を明確にするために両社で協議しましょう。
単にコスト削減だけを目的とすると、業務のやり方を最適化できずに、生産性が向上できなくなることがあるので注意しましょう。
譲受側と譲渡側の基幹システムの課題を洗い出す
システム統合の機会にそれまで両社が抱えていた課題を解決できるように、譲受側と譲渡側の双方で課題を洗い出し、システム統合の方針に課題を解決する施策を反映しましょう。
ただし、すべてをシステムで解決しようとするとコストが大きくなることもありますので、
業務のやり方やシステムの運用で解決できることがないか、を合わせて考えましょう。
基幹システム統合によって起こり得るリスクを想定する
基幹システム統合により発生するリスクもあります。
特に従業員の業務のやり方が変わる場合、一時的に従業員にストレスがかかりますので、
事前にシステム統合による従業員のメリットを説明したり、「クイックヒット」により、すぐに効果を感じられる施策を計画するなど、従業員のケアを行いましょう。
また、システムが変わると、それまでと異なるセキュリティ対策が必要になることがありますので、それまでと同じ対策だけで良いと決めつけずに、統合後のシステムにあったセキュリティ対策を行いましょう。
要件定義をしてコストを検討する
まず、業務要件を明確にします。それには、基幹システム統合の目的に立ち返り、生産性を向上することか、加えて業務改革を達成することか、さらにはDXを加速することか、どこまでを目指すか、に合わせて業務要件を定義します。
その上で、業務要件に合わせてシステムの機能要件や非機能要件を定義します。ただし、機能要件や非機能要件の理想を追えば、当然コストは膨らみます。コストとの兼ね合いも見ながら、どこまでを要件に入れるかを検討しましょう。
PMIで計画的に基幹システム統合を実行する
M&Aが成立してPMIに入ったら、基幹システムの統合に着手できるよう、プレPMIの段階で基幹システム統合の目的を両社で合意し、できれば計画まで作成しておくのが良いでしょう。
業務のやり方が変わったり、業務変革やDXの加速まで行う場合は、目的や計画を決定する前にキーマンに意見を聞いておくことも検討しましょう。
ただし、M&A整理前に意見を聞く場合は、情報管理には十分注意をしてください。会社から正式なM&Aの説明がある前に従業員の間でうわさが広まると、不安が広がるだけでなく、M&Aが成立しなくなるリスクもあります。
まとめ
基幹システム統合とは、M&Aを推進する上で欠かせないシステム統合の大きな部分を占めます。
基幹システムは企業経営にとって根幹となるシステムなので、生産性向上や情報共有に大きな影響を与えるため、M&Aでは基幹システム統合が重視されます。
M&Aにおける基幹システム統合の目的は、2社の共通業務を一元化することで、間接業務の比率を下げ生産性を向上し、情報共有を促進することでシナジーを生むことです。
基幹システム統合の目的を明確化し、譲受側と譲渡側の基幹システムでそれまで抱えていた課題を解決しましょう。
事前にシステム統合による従業員のメリットを説明したり、「クイックヒット」により、すぐに効果を感じられる施策を計画するなど、従業員のケアを行いましょう。
業務要件に合わせてシステムの機能要件や非機能要件を定義しましょう。その際、コストとの兼ね合いも見ながら、どこまでを要件に入れるかを検討しましょう。
M&Aが成立してPMIに入ったら、基幹システムの統合に着手できるよう、プレPMIの段階で基幹システム統合の目的を両社で合意し、計画まで作成することも検討しましょう。